慢性腰痛の施術について~その2~

こんにちは。

かねた整骨院の金田隆佳です。

前回は、「急性腰痛とは仕組みが全く異なる」「心理社会的要因が深く関係している」慢性腰痛は、「これをやれば治る!」という治療法は存在しておらず、認知行動療法(心理療法)と運動療法(エクササイズ)がメインとなり、薬は補助的なものになっているので、自分自身の日常生活と考え方の癖を見直し、地道に変えていくことが、慢性腰痛の克服につながる、ということを書きました。~その1~はこちらから

今回は、自分自身の日常生活と考え方の癖を見直す部分を

1,腰痛に対する正確な知識を身につける

2,考え方の癖を見直し変えていく

3,生活習慣を見直し変えていく

に分けて説明していきます。

では早速。

1,腰痛に対する正確な知識を身につける

世間には「腰痛は怖いもの」という考え方が浸透していますが、研究が進むにつれて「腰痛は怖がらなくても大丈夫」ということが分かってきました。

腰痛でも肩こりでも、根拠のない噂話程度の情報がたくさん出回り、あたかもそれが真実であるかのように話す専門家もたくさんいるので、腰痛に対する恐怖や不安に支配されてしまっている方もいらっしゃいます。

科学的に分かってきている根拠のある情報を知っておくと、選択肢が増え、腰痛からの回復が早まると言われていますので、ここに分かりやすい情報を載せておきます。

1995年の国際腰痛学会で、腰痛界のノーベル賞と言われているボルボ賞を受賞した有名な研究に

椎間板ヘルニアと診断された強い腰下肢痛を訴える患者46名と、年齢、性別、職業などを一致させた健常者46名の腰部椎間板をMRIで比較した結果、健常者の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性が確認された。http://1.usa.gov/iN3oKG

があります。

そして、このような研究もあります。

腰痛患者378名と健常者217名の腰部X線写真を比較した研究でも、両群間における変形性脊椎症の検出率に差はなく、加齢と共に増加する傾向が見られることから、変形は正常な老化現象にすぎず、腰痛の原因とは考えられないと結論。http://1.usa.gov/msMFAV

これらは、「腰が痛くない人にも椎間板ヘルニアや変性があるけど、それが普通ですよ」「年とともに変形していくけど、それは腰痛の原因ではないですよ」ということを言っています。

更に、このような研究もあります。

腰痛の原因はいまだに謎だが、椎間板変性を腰痛の原因と考える脊椎外科医は23%のみで、その患者に固定術か椎間板置換術を選択すると答えた脊椎外科医はわずか1%しかいない。もし自分が患者なら99%が保存療法か放置すると回答。http://1.usa.gov/katDsM

これは、医療現場で日々奮闘されている脊椎外科の先生の多くが、「自分が腰痛くなっても自分のことは手術しないね」と答えたという研究です。

これ以外にも色々な研究報告がありますが、悪性腫瘍などの重大病変が除外されれば、腰痛は怖がらなくても大丈夫ということです。

2,考え方の癖を見直し変えていく

慢性腰痛の治療に用いられる認知行動療法は、歪んだ非現実的な認知様式である自動思考パターンを修正していくことが主目的です。

私には、認知行動療法について分かりやすく説明することが出来ないので、私がいつも参考にさせてもらっているカウンセラーの向後義之さんの著書「わかるカウンセリング 自己心理学をベースとした統合的カウンセリング」から引用させていただきます(向後さんから許可をいただいています。ありがとうございます!)

P213~

自動思考には6パターンがあるといわれています。

この非現実的な自動思考は、脳内の神経科学的な機能不全や思考の癖なので、修正可能です。

(1)悲観的予測

明確な根拠もないのに、否定的悲観的な予測をしてしまうこと。例えば、「ずっと、うつが続いているが、どうせ、この状態は治るわけがない」、「どうせ、私の提案なんか採用されるわけがない」など、「どうせ」で始まる思考パターンです。彼らは、「どうせ、・・・だから」と悲観的結果を出して、実行する前にすでにあきらめ、絶望してしまっているのです。それに対する現実思考は、「自分のうつは深刻だが、それが治るか治らないかは、実際にカウンセリングをうけてみなければわからない」、「採用されるかされないかは、企画書を提出してみなければわからない」などとなります。

(2)オール オア ナッシング思考

ちょっとした欠陥も許せない思考パターンです。例えば、「ひとう不可をとったので、僕の人生は、もうおしまいだ」などです。それに対する現実思考は、「ひとつぐらい不可をとったぐらいで、僕の人生には何ら影響はない。しかも資格の取得に必要のない単位ではないか!」などとなります。

(3)結論への飛躍

結論が出る前に、先回りして「悲観的な」結論を出してしまうことです。例えば、「約束の時間なのに彼はまだ来ない。もう私のことを嫌いになったんだ」などです。それに対する現実思考は、「だれでも、ちょっとぐらい遅れることはあるし、少し待ってみよう」などとなります。

(4)トンネルのような視野

自分の欠点や劣っている点ばかりに注意がいってしまって、自分の良いところに気づかないことです。例えば、すばらしい音楽の才能があるのに、「僕は数学が苦手だ」と悩んでいるなどです。それに対する現実思考は、「確かに僕は、数学が苦手だが、それがなんだ!僕には音楽があるじゃないか!」など。

(5)自責的思考

なにか悪いことがあると、自分のせいだと思い込んでしまうことです。例えば、学校でいじめられたとき、「私が地味で、ぱっとしないからだ」と思ってしまうなどです。それに対する現実思考は、「何が原因かは知らないが、こんな仕打ちをされるいわれな無い」などとなります。

(6)「~ねばならない」思考

オール オア ナッシングにも通じる思考パターンで、例えば、「自分は、成績優秀で、スポーツマンで、いつも明るくさわやかでなければならない」と思い込んだりすることです。それに対する現実的な思考は、「そんなことできるわけがないじゃないか。まわりにも、そんなやつはいない。むしろ、愛すべき欠陥があった方が人間らしい」などとなります。

以上、引用終わり。

本書では、これに続いて、「非現実的な自動思考を認識し、認知パターンを変えていく方法」が書かれています。

慢性腰痛の克服には、この認知行動療法(心理療法)が有効だとされていて、世界各国で推奨され定着しはめています。ですが、日本では慢性痛に対する理解の遅れと医療制度上の問題で、認知行動療法を提供するための環境整備が遅れているため、治療を受けられる医療機関が限られています。

なので、慢性腰痛の本格的な認知行動療法を実践するのは大変ですが、自分の思考の癖がどんなパターンなのかを知ることと、認知行動療法ではありませんが、「リフレーミング」ならできると思います。

「リフレーミング」は、「コップに半分入っている水を、もう半分しかない…と思うか、まだ半分もある!と思うか」という喩えはよく使われますが、これがリフレーミングです。

例えば、「腰が痛くて起き上がるのに時間がかかった」を「時間がかかっても起き上がれた」、「体操をやってみたけどすぐに腰が痛くなった」を「腰は痛くなったけど体操ができた」という考えに捉えなおすなどです。

このように、自分の考え方の癖、認知パターンに気づき、修正していくことが大事になります。

3,生活習慣を見直し変えていく

慢性腰痛を克服するためには、腰痛に対する思い込みや、自動思考パターンという自分の考え方の癖を修正していくことを含めて、「日常生活を見つめなおして変えていく」ことが、とても大切になります。

身体の使い方や考え方に「癖」があるように、生活にも癖があります。

・食事、睡眠、入浴、排せつ

・酒、たばこ、栄養ドリンク

・運動をしない、運動し過ぎている

・日々緊張している、ダラダラし過ぎている

・体重管理

色々なことが考えられ、どれがどこまで痛みに影響しているかは、一人一人違います。

皆さん一人一人が、「自分の生活スタイルにはどのような癖があるのか?」を見つめなおし、変えやすいところから変えていくことが、慢性腰痛の克服につながります。

今回は以上となります。

次回は、これらを踏まえて、実際にかねた整骨院ではどのような施術を行うのかをお伝えしていきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

かねた整骨院

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です