自分が提供している施術に最低限必要だと思われる痛みの知識は知っておいたほうがいいのではないでしょうか。

【急性痛】

急性痛(acute pain)とは、例えば「今日の朝起きたら、急に首が痛くなった」とか「1週間前にぎっくり腰をやって腰が痛くなった」など、時間や期間的な側面からみると、罹患してからそれが治るまでの痛みのことを言います

(「まぁ~、だいたいこの位で治るだろう」というのが1ヵ月くらいって言われてるので、そこら辺が目安だと思ってください。)

ですが、痛みや怪我の“治療”という面からみると急性痛とは

「末梢神経先端部の侵害受容器が興奮(脱分極)し、発生した痛み信号が脊髄を通り、脳に伝えられ脳が情報を読み取ってはじめて感じる痛み」

のことを言います

「何日前の何時くらいから痛くなった」などの時間や期間的な情報も状態を把握するために大切ですが、治療法を決定するうえで大切なのは、“患部の受容器の興奮で起こってる痛みなのか違うのか”になります

図は、加茂先生のサイトから引用させてもらいました

【慢性痛(chronic pain)】

急性痛は、末梢神経先端部の侵害受容器が興奮(脱分極)し、発生した痛み信号が脊髄を通り、脳に伝えられ脳が情報を読み取ってはじめて感じる痛み。

この痛みとは別に「昔から痛い」とか「何年も前から痛い」など、いわゆる慢性痛があります。

慢性痛は、今までは単純に急性痛が3ヵ月~6ヵ月など期間的に長期化した痛みとされてきました。

ですが、1980年代半ば、急性痛の仕組みが解明されてきたことによって、痛みの原因となった傷が治っても痛みが続いたり、それどころかますます痛みがひどくなって日常生活に支障をきたしたり、検査では原因がみつからないのに痛みが長期化したり・・・・など急性痛の仕組みでは説明ができない痛みがあることがわかりました。

研究が進むにつれこの痛みは、痛み信号が中枢神経(脳・脊髄)に繰り返し入力されることなどにより起こる、※痛覚神経系の可塑的変容(痛みの歪み)が原因で起こる事がわかりました。
 

つまり、慢性痛と呼ばれる痛みには

1、単純に急性痛が長期化しているだけの慢性痛
2、中枢神経系の可塑的変容で起こっている慢性痛

の2種類があるということになります。

この、中枢神経系の可塑的変容で起こる慢性痛は「痛み」という“症状そのものが病気”であるため、単純に急性痛が長期化している慢性痛と区別して、「慢性痛症」と呼ばれることもあります。

追記【可塑的変容(可塑性:痛みの歪み)】について

※痛みは、侵害受容器が痛み刺激で興奮し、そこで発生した痛み信号が脳に伝えられて「痛い」と感じます。その為、痛み刺激がなくなれば痛みは発生しません。痛み系は正常に機能できている場合は、ゴムボールのように外から刺激を加えても元に戻る事ができます。ですが、強い痛みが続いたり、神経そのものが傷ついたりすると、痛み系は手などで押してへこませた粘土の塊のように、元に戻れなくなってしまいます。この粘土のような性質を可塑性と言います。このように痛み系の可塑性によって「痛みは歪み」ます。

☆侵害受容性疼痛

侵害受容性疼痛は、一次侵害受容ニューロン末端の侵害受容器の興奮(電気信号)から起こる痛みです

痛みを伝える神経線維の種類によって、一次痛と二次痛に分けることができます

例えば、テーブルの脚に小指をぶつけたとします。その時瞬間的に「痛でっっ(;゚Д゚)」と感じるのが一次痛で、その後にくる「ズキズキ」「ジクジク」する痛みが二次痛です

一次痛を伝えるのはAδ神経線維で受容器は高閾値侵害受容器。
身体が傷つくような強い刺激にのみ反応します。

二次痛を伝えるのはC繊維で受容器はポリモーダル受容器。
慢性化するほど痛みの場所の判別が難しくなります。

それぞれの受容器が興奮して発生した電気信号が脊髄を通過し、脳(大脳皮質や大脳辺縁系)に到達して「痛い」と感じます。

ポリモーダル受容器は痛みに感ずるブラジキニン・プロスタグランジンなどの化学物質、物理的な刺激、熱刺激など様々な刺激に反応します。そして非侵害刺激(身体が傷つかないような弱い刺激)にも反応します。

つまり、私たちを悩ませている痛みの原因は、このポリモーダル受容器の活動が基本になっています。

☆神経障害性疼痛

神経障害性疼痛は、神経そのものが障害されたときに起こる痛みです

外傷・ウイルスなど様々ですが、神経そのものが傷ついたりなど障害されたときに起こるもので、帯状疱疹後神経痛や幻肢痛が有名です。

※図は、熊澤先生の書籍から引用させていただきました

神経そのものが障害されると、脱髄(Aδなどの有髄繊維の軸索繊維を覆う髄鞘が壊れちゃうこと)が起こったり、そのせいで異所性発火が起こったり、触覚神経なんかと混線してエファプス(他の神経の興奮を伝えてしまう現象)が起こったり、侵害受容器やDRG(後根神経節)に交感神経の受容体ができちゃうことでアドレナリンやノルアドレナリンに反応してしまい痛みが誘発されるようになってしまうと言われています。

●末梢神経の障害による痛み(例)

・帯状疱疹後神経痛 
・糖尿病性神経障害性疼痛
・幻肢痛  
・複合性局所疼痛症候群CRPS TypeⅡ(昔のカウザルギー)など

●中枢痛(例)

・脊髄損傷 
・脳卒中など

アロディニア、痛覚過敏、自発痛、灼熱痛など様々な知覚異常を伴ったりすることも多く、交感神経の過剰興奮症状(発汗・心拍数増・皮膚温異常など)が起こることもあります

※図は、熊澤先生の書籍から引用させていただきました。

※心因性疼痛という痛みもありますが、わざと書いていません。

腰や肩など筋骨格系の痛みでお悩みの人たちに対して、私たち民間療法を提供する側がこの部分を知らないと、痛み施術なんて出来っこありません。

なぜ痛むのか?
なぜ治らないのか?
どうすれば治るのか?

を知らないで施術をしているから、

ストレスです
心の問題です
嘘ついてるでしょ(詐病)

と治せない、説明できないことを隠すための言い訳ばかりをすることになるんです。

治療家なら、自分が提供している施術に最低限必要だと思われる痛みの知識は知っておいたほうがいいのではないでしょうか。

かねた整骨院

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