腰痛などのセルフケアするとき、身体ではどんなことが起こっているのか

こんにちは

かねた整骨院の金田隆佳です。

今回は、腰痛や肩こりなどを自分でケアする、「セルフケアするとき、身体ではどんなことが起こっているのか」をお話ししていきたいと思っています。

私たちがセルフケアをしたくなるのは、痛みを楽にしたいからです。

痛みがでないようにセルフケアをするという方もいらっしゃるでしょう。

いずれにしても、痛みという不快な感覚に対処するために色々試しながらセルフケアをするということです。

そもそも腰痛や肩こりなど痛みというのは、身体にとっては警告信号です。

身体を命を守るための警告信号なので、不快・苦痛でなければ意味がないのですが、そのままだとしんど過ぎるので、私たちの身体には、その痛みから逃れるための仕組みも備わっています。

腰痛や肩こりなどのセルフケアというのは、市販の痛み止めなど、何かを飲んだりする方法を除いて、「元々身体に備わっている鎮痛の仕組みが上手く機能できるように、外から何かしらの刺激を加えている」ということになります。

何かしら身体の外側から刺激を加える方法としては

・自分で揉む
・温める
・ストレッチ

などがあります。

この刺激は

・侵害刺激(強い刺激:痛みを伴う)
・非侵害刺激(軽い刺激:やさしい:痛みを伴わない)

に分けることができます。

ここから、セルフケアをすることで、身体の中にあるどんな鎮痛システムが作動して楽になるのかを説明していきます。

【自分でも揉む・ほぐす・マッサージする】

◆強い刺激の場合

・「広汎性侵害抑制調節(DNIC)」というシステムが作用しています。

DNICは、痛みがある部位とは別の部位に侵害刺激(熱刺激、物理的な刺激、発痛物質などの化学的な刺激)や、非侵害刺激を加えることによって、痛みが抑制されるという理論です。

患部の痛みのスタート地点であるポリモーダル受容器と呼ばれている部分の活用が抑制されるため、楽になると言われています。

・「下行性疼痛抑制系」というシステムが作用しています。

基本的に痛みは、患部(末梢)で発生した痛みを伝える電気信号が脊髄を経由して脳に伝達されて脳が信号を読み取ることで初めて「痛い!!」と感じます。脊髄では脊髄後角と言う場所で脳にその電気信号を伝えるためのデータの受け渡しが行われています。

下行性疼痛抑制系とは、痛いという情報が入ってきたときに、中脳のPAG(中脳中心灰白質:periaqueductal grey)が最初の場所になり脊髄でセロトニンやノルアドレナリンを放出することで痛みを抑制する鎮痛システムです。

◆軽い刺激の場合

軽い刺激の場合でもDNICが作用しています。

DNIC以外にも、軽い刺激の場合は、身体を緊張させたり血流を悪くしたりする交感神経系の活動を抑えることが分かっています。

交感神経系の活動が抑制されると、血流がよくなり、患部の痛みを伝える化学物質(発痛物質)が洗い流され濃度が下がるので、楽になります。

【温める】

温める場合は、お風呂でも蒸しタオルなどのホットパックでも、基本的に「気持ちが良い刺激(非侵害刺激)」だと思います。

これも、自分でマッサージするときと同じく、DNICが関与しています。

あとは、温めることで血流がよくなり、患部の痛みを伝える化学物質(発痛物質)が洗い流され濃度が下がるので、楽になります。

※43℃以上の熱刺激は「痛み」として認識されてしまいます。

なので、43℃以上の温度で温めた場合、例えばすごく熱い蒸しタオルの場合は下行性疼痛抑制系が作用して楽になると考えられます。

【ストレッチ】

ストレッチには、バリスティック・ストレッチング(反動を利用したストレッチ)などの動的ストレッチ、スタティック・ストレッチングなどの静的ストレッチがあります。

動的ストレッチで痛みを感じる範囲まで行う場合は、下行性疼痛抑制系が作用していると考えられます。

静的ストレッチは、筋肉をゆっくり伸ばしていって抵抗を感じた場所(痛みのない)で止めて、その状態を維持するやり方です。

筋肉からの抵抗を感じた場所でその状態を維持意すると、筋腱移行部に沢山存在すると言われているゴルジ腱器官と呼ばれる「筋肉がどの位緊張しているのかを感知する受容器」が働いて、Ib神経線維(求心性神経:末梢からの信号を中枢へ送る神経)を興奮させます。

Ib神経線維は脊髄の介在ニューロン(脊髄にある信号の中継所)を介して、運動神経線維の活動を抑えるため、結果的に筋肉の緊張が弛みます。

筋の緊張がゆるむと、患部の血流が良くなるので、発痛物質の濃度は下がり楽になります。

【運動】

エクササイズなどの運動の場合は、下行性疼痛抑制系が関与していると言われています。

あとは、「ストレス鎮痛」です。

短期的なストレスは痛みを楽にすると言われています。

ストレスによって視床下部が刺激されると、交感神経系の活動が亢進されます。そうすると、副腎髄質からノルアドレナリンなどのカテコールアミンが分泌されます。このカテコールアミンには強い鎮痛作用があると言われています。

もう一つは、視床下部が下垂体を刺激すると、βエンドルフィンというモルヒネ様鎮痛物質が分泌されます。ランナーズハイと呼ばれる現象がありますが、それもこのシステムが作動するために起こります。

セルフケアの方法は色々ありますが、基本的にはどんなやり方でも以上のような、身体の中にある鎮痛システムが作動して楽になっていると考えることができます。

最後にもう少しだけ。

まずは、これを見て下さい。

・広汎性侵害抑制調節(DNIC)には、前頭前野、中脳中心灰白質が関与
・下行性疼痛抑制系にも前頭前野
・プラセボ鎮痛(※治験においては有効成分を含まず治療効果の無い薬を「プラセボ(プラシーボ)」または、「薬」と呼びます)にも、前頭前野、中脳中心灰白質が関与
・痛みを抑えようと念じると、前頭前野、島皮質、前帯状回が賦活される
・前頭前野を賦活させるような制御運動により、疼痛抑制効果が表れる可能性があるという報告がある

身体の中にある鎮痛システム(中枢神経・脳)には前頭前野が深く関与していることが分かります。

前頭前野は、

・ヒトをヒトたらしめ,思考や創造性を担う脳の最高中枢であると考えられている。
・系統発生的にヒトで最もよく発達した脳部位であるとともに,個体発生的には最も遅く成熟する脳部位である。
・老化に伴って最も早く機能低下が起こる部位の一つでもある。
・ワーキングメモリー、反応抑制、行動の切り替え、プラニング、推論などの認知・実行機能を担っている。
・高次な情動・動機づけ機能とそれに基づく意思決定過程も担っている。
・社会的行動、葛藤の解決や報酬に基づく選択など、多様な機能に関係している。
脳科学辞典から引用させてもらいました。

という部分です。

そして

・前頭前野の高次機能はドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリン(ノリアドレナリン)、GABAなどの神経伝達物質によって支えられていて、これらの物質が欠乏すると、ヒトはワーキングメモリー課題の遂行、プラニング、意思決定や反応抑制の障害、情動障害を示したりする。
・ドーパミンは大脳皮質の中では前頭葉に最も多く分布しており、前頭前野の働きに最も重要な役割を果たす神経伝達物質である。
・前頭前野が効率的に働くためには,ドーパミン量がある「最適レベル」にある必要があると考えられている。

と言われています。

ここまでをまとめると「前頭前野の活動の低下が痛みの原因だと考えられる」ということになり、「前頭前野が効率よく働けるようにしておくと、セルフケアの効果も高まる」と言い換えることもできます。

では、ドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリン(ノリアドレナリン)、GABAなどの神経伝達物質はどのようにして作られるのかですが、前頭前野の働きに最も重要な役割を果たす神経伝達物質であるドーパミンは、フェニルアラニンやチロシンというアミノ酸がチロシン水酸化酵素によってドーパになり、それがドーパ脱炭酸酵素の働きでドーパミンになることがわかっています。

必須アミノ酸であるフェニルアラニンは、鶏むね肉や牛レバーに多く含まれています。

非必須アミノ酸であるチロシンはフェニルアラニンから作られますが、チロシンを多く含む食材として豚ロース赤身などがあります。

だからといって、それだけを食べてればよいというわけではなく、「食」を考えることが大切だということです。

あとは、適度な運動や睡眠(質の良い)もです。

つまり、生活環境や考え方、お腹が減ったら食べる、冷えたら温める、水を飲む、使ったら休ませるなど、これまでの生活全般を考えながらセルフケアを行うことが大切だということになります。

そうすると、セルフケアの効果に様々な変化が現れると思います。

今回は以上となります。

かねた整骨院

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