「遅筋が上手く使えていない=ある意味不活動」という解釈です。

「治そう!発達障害どっとこむ」の雑談のお部屋にも投稿してきましたが、同じ内容のものをここのブログにも書いておきますので、参考にしていただければと思います。

栗本さんから遅筋についての話を聞いたとき、片麻痺の人の水中でのリハビリ(トレーニング)の話もでましたが、「遅筋を育てる」に関することを筋委縮という点からみると「筋力トレーニングや栄養療法だけだと足りない」ことへの理解が深まると思います。

筋委縮というのは「一度発育した骨格筋の容積がなんらかの原因で縮小した状態」と定義されています。

「なんらかの状態」というのは
・ベッドレストやギプス固定など骨格筋の不活動
・末梢神経損傷による除神経

が一般的です

骨格筋の不活動による筋委縮では速筋より遅筋のほうが筋委縮になりやすく、除神経では遅筋より速筋のほうがなりやすいと言われています。

理由としては
・速筋は神経調節に強く依存している
・遅筋は姿勢の保持、体重支持、重力のなかでもやりたいことをするために普段から動員されているので、筋肉の収縮や負荷が制限されると、その相対的な影響を著しく受ける
などがあります。

普段、私たちの筋細胞を構成するタンパク質は「合成と分解」のバランスが保たれていますが、筋委縮はその合成と分解のバランスが崩れ、
・合成の低下
・分解の亢進
という状態になっています。

筋の不活動による筋構成タンパク質の合成低下は
・材料であるポリペプチド鎖(アミノ酸の繋がり)が正しく折りたたまれないこと(立体構造を作れない)
・そのポリペプチド鎖の伸長が遅延する
ことが影響しているといわれています。

そして、不活動での色々なストレスの影響で変性状態となった筋構成タンパク質は分解されやすいという特徴があります。

この蓄積によりタンパク質の分解亢進に繋がります。

タンパク質の分解は、筋細胞内に存在しているタンパク質分解系の作用によってすすんでいきます。

タンパク質分解系であるカルパイン系・リソソーム系は、筋肉の弛緩と収縮に関係する細胞内Ca²⁺濃度上昇や筋小胞体機能低下などによる影響を受けます。

筋肉が弛むためには、筋小胞体から放出されたカルシウムを再取り込みするためのエネルギーが必要になります。このエネルギーにはATP(アデノシン三リン酸)が必要です。

ですが、筋肉細胞の血流低下や虚血状態では筋肉が弛むために必要なATPの生成が抑制されてしまいます。

つまり
・栄養をとっていても筋肉に適度な負荷をかけ続けることができなくなったとき筋肉は弱る
・筋肉の血流の悪さも影響する
・遅筋がその影響を著しく受ける
ということです。

以上のことから、不活動により弱ってしまった筋肉を元気にするためには
・遅筋に
・適度な負荷をかけて
・血流をよくする
ことが大事だということがわかります。

栄養はそれを補助する役割ですね。

今回は筋委縮という点から説明してみましたが、うちに相談に来られる方や柔道スポ少の子供たちをみていると「遅筋の発達の遅れ」は、この筋委縮のメカニズムと似ている状態ともいえるのではないかと思います。

「遅筋が上手く使えていない=ある意味不活動」という解釈です。

筋委縮と遅筋の発達の遅れは厳密には違いますが、筋力トレーニングと栄養療法の限界を理解するために筋委縮の仕組みを参考にしていただければと思います。

前回も書きましたが、「自傷・他害・パニックは防げますか?」のP86~に栗本さんの遅筋に対する知見と育てるためのボディワークが載っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です