子どもが負傷したとき家でケアする方法2 回復の仕方の違い
「子どもが負傷したとき家でケアする方法シリーズ」では、スポーツ少年団や部活動中に子どもが負傷してしまったとき、各家庭で子どもさんのケアをするための方法をお伝えしていきます。
今回お伝えするのは「回復の仕方の違い」になります。
足や腕など子どもが負傷した場所でも、筋肉を傷めたのか、靭帯を傷めたのかでは回復の仕方が違います。
例えば、足を負傷した場合でも、足首の捻挫なら靭帯、太ももの肉離れなら筋肉と筋膜が負傷します。
なので、捻挫なら靭帯の回復の仕方、肉離れなら筋肉と筋膜の回復の仕方を知っておくと、子どもの状態に合わせた適切なケアができるようになります。
☆結合組織の回復の仕方
腱、靭帯、骨膜、筋膜は結合組織と呼ばれています。
下の図は、その結合組織の回復の仕方を表しています。
例えば、令和3年12月1日(水)に足首を捻挫したとします。※捻挫は靭帯損傷です(程度により損傷度合いが変わるだけです)
・ケガをした日(0日目)から炎症が起こります。
・炎症は12月3日(金)4日(土)が炎症のピークで、そこと重なるように新しい組織ができてきて、回復してきている組織に栄養を届けるために血管新生が起こり始めます。
・炎症は徐々に落ち着いてきて、捻挫して傷めた靭帯も回復していきます(成熟期)。
※傷めた程度や血管新生の状態などにより、治るまで時間がかかります。
それぞれを専門的に説明すると以下のようになります。
炎症期
増殖期の主要な組織学的変化である肉芽組織形成と血管新生に不可欠なサイトカインが放出される大事な時期(サイトカイン は、細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称)
増殖期
肉芽組織(タイプⅢコラーゲン:伸長性、柔軟性が要求される組織で含有率が高い)が形成されたり、回復してきている組織に栄養素を供給するために血管新生と呼ばれる反応が起こる時期。
※血管新生の乏しい肉芽組織は治りが遅く障害され、難治性になると言われています。
成熟期
創収縮・・・傷が小さくなっていく
コラーゲンのリモデリング・・・瘢痕組織へ変化するためにタイプⅢコラーゲンがタイプⅠコラーゲン(硬度が要求される組織で含有率が高い)へと変化する
☆骨組織の回復の仕方
骨折など、骨を傷めた場合は
骨折(骨・骨膜・血管の損傷)により血種形成→炎症→肉芽組織形成・毛細血管形成→化骨形成→破骨細胞により不要なものは吸収され骨芽細胞により新たな骨が形成。
部位や年齢により治癒日数は異なります(子どもは早く治る)。肋骨で約3週間、鎖骨で約4週間、上腕骨で約6週間、大腿骨で約8週間、大腿骨頸部で約12週間と言われています。
という感じになります。
骨折でも、はじめに炎症が起こりますので、安静にしててもズキズキ痛みます。
炎症が落ち着いてくれば、骨がくっついていなくても強い痛みは落ち着いてきます。
ですが、きちんと骨がくっつくまで固定が必要なので、痛みが落ち着いても無理は禁物です。
☆筋組織の回復の仕方
下の図は、筋肉痛や肉離れなど筋肉の回復の仕方を表したものです。
筋組織損傷
↓
筋繊維の壊死
※1筋繊維は多核細胞なので生存力が強く、壊死は一部にとどまり再生・回復する
↓
筋繊維の壊死が発生した1~2日後には図bのような状態となり、炎症もピーク
※2筋繊維の部分的な壊死だった場合には大きな出血はなく痛みもないが、炎症のピークが遅れて発生することが、遅発性筋痛の一因といわれている。「肉離れ」など筋損傷の程度が大きい場合は、筋繊維の壊死だけではなく筋膜を含んだ筋組織の断裂に及ぶため、出血も顕著にみられ、炎症反応も起こる
↓
筋繊維の再生が始まる 図c
↓
壊死から3日後には筋管細胞の形成が始まる 図d
↓
壊死から7日後、筋管細胞が壊死した筋繊維の両端をつなぎ合わせるように融合し筋繊維を再生する
↓
壊死から1か月後にはほぼ回復し元通りになる(再生完了)
※3筋管細胞がそのまま成長して新たな筋繊維となり、筋繊維の数が増加することもある
となります。
筋肉が負傷した時も、はじめに炎症が起こります。
例えば、令和3年12月1日(水)に太もも裏(ハムストリングス)の肉離れを起こしたとします。※肉離れは筋肉の損傷です(程度により筋膜も損傷します)
・負傷した日から炎症が起こり、その日に細胞の壊死が起こると、そこから1~2日後の12月2日(木)3日(金)に炎症がピークを迎えます。
・12月7日(火)には筋繊維が再生されてきて、令和4年1月1日には、ほぼ回復(再生完了)しています。
・ただ、筋繊維は回復していますが、筋肉が硬くなったり柔軟性や筋力が落ちているので、痛みが残る場合があります。
筋肉を傷めた場合も図を参考にすれば、いつまで冷やせばいいのか、温めたりリハビリを始めるのはいつからなのかなどが分かると思います。
まとめますと、筋肉、靭帯、腱、筋膜、骨膜、骨、どれを傷めても程度によりますが、
・まずは炎症が起こる
・その後に壊れた組織の回復が始まる
・組織回復のためには酸素や栄養素を運ぶために、そして痛み基になる発痛物質を洗い流すためにも血液の流れをよくする必要がある
・完全回復までの期間は、どの組織を損傷したのか、ケガの程度、ケガをしながら無理しなかったか、栄養などで決まる
となります。
次回は、この組織の回復の仕方を基に、冷やす、温めるなど、実際に家でケアする方法をお伝えしていきます。
今回の最後に、骨膜や筋膜などの説明を書いておきますので、参考にしていただければ幸いです。
筋膜
・骨格金全体を覆う筋上膜、筋束を覆う筋周膜、筋繊維を覆う筋内膜がある
・結合組織
・コラーゲン繊維が網目状で伸張性に富んでいる (※腱・靭帯はコラーゲン繊維に伸張性がないので組織の伸張性はわずかかない)
骨膜
骨の表面を覆う結合組織の膜
腱
骨格筋の両端にあって,筋肉を骨に付着させる仲介をしている強力な結合組織
靭帯
骨同士を連結し、関節の安定性を高め、運動方向を制御する結合組織
コラーゲン
靭帯、腱、骨などを構成するタンパク質
硝子軟骨
・関節軟骨、骨端板、肋軟骨、気管軟骨、喉頭軟骨などを構成する軟骨。硝子軟骨の基質はゲル状であり、その約70%は電解質を含む水分で構成されている
・血管、リンパ管、神経を有さないのが特徴で、厳密な意味での炎症は起こらない。
弾性軟骨・・・耳の軟骨など
繊維軟骨・・・椎間板、関節包、腱や靭帯が骨に結合する部分など
骨化核(点)
軟骨でできた骨の原型となる部分
骨端核
成長軟骨(骨端軟骨)の中心にできる骨となる核