子どもが負傷したとき家でケアする方法5 ストレッチ
「子どもが負傷したとき家でケアする方法シリーズ」では、スポーツ少年団や部活動中に子どもが負傷してしまったとき、各家庭で子どもさんのケアをするための方法をお伝えしていきます。
今回は、「ストレッチ」について説明していきます。
ケガや不調の回復のためにストレッチを取り入れたいのは、緊張させるより「弛めたい」「柔らかくしたい」からだと思います。
ストレッチを説明する前に、まずは筋肉が縮んで(収縮)ゆるまる(弛緩)生理学的な部分を知っておくと、どうすればストレッチの効果を高めることができるのか?への理解が深まります。
~筋肉の収縮と弛緩の生理学~
筋肉の収縮(縮む)は、脊髄前角細胞の興奮(脱分極・電気信号発生)が引き金になって起こります。
脊髄前角細胞が興奮すると、運動神経を経由して筋肉と接合する部分である神経筋接合部に電気信号が伝わります。
そして、運動神経を伝わってきた電気信号を筋肉に伝えるために、アセチルコリンという神経伝達物質が筋肉の細胞膜にむかって放出されます。
筋肉の細胞膜にある受容体が神経伝達物質であるアセチルコリンをキャッチすると脱分極(電気信号発生)が起こります。
これが筋小胞体に伝わり、筋小胞体から筋肉細胞内にカルシウムが放出されることで筋肉は収縮(縮む)します。
収縮した筋肉が弛緩(ゆるむ)ためには、筋小胞体から放出されたカルシウムを再取り込みするためのエネルギーが必要になります。このエネルギーにはATP(アデノシン三リン酸)が必要です。
ですが、筋肉細胞の血流低下や虚血状態では筋肉が弛むために必要なATPの生成が抑制されてしまいます。
つまり、筋肉の緊張をゆるめるためには、
・神経伝達物質や受容体のもとになるアミノ酸などの栄養素、ビタミン、ミネラルを摂取すること
・交感神経の活動を抑えて筋肉細胞の血流低下や虚血を解消してあげること
この2つが必要になるということが分かります。
続いてストレッチを説明していきます。
ストレッチには、大きく「バリスティック・ストレッチング」と「スタティック・ストレッチング」の2種類があります。
☆バリスティック・ストレッチング
このストレッチは、反動をつけて筋肉を伸ばすというやり方です。ラジオ体操のような体操がこれにあたります。
筋肉は急に伸ばされると、筋肉の長さの変化をキャッチする筋紡錘が興奮します。そうすると、Ia神経線維によって脊髄前角の運動神経細胞が直接刺激されるので、反射的に筋肉は収縮してしまいます(伸張反射と呼ばれています)。
ですので、バリスティック・ストレッチングは筋肉を弛めるよりも、ウォーミングアップなど筋肉を緊張させることを目的とするときに活用した方がいいです。
☆スタティック・ストレッチング
このストレッチは、バリスティックとは違い、反動をつけず筋肉をゆっくり伸ばし抵抗を感じたところでその状態をキープするやり方です。
筋肉をゆっくり伸ばして抵抗を感じたところで保持すると、筋腱移行部に多く存在するゴルジ腱器官がその刺激をキャッチします。そうすると、その刺激はIb神経線維によって脊髄後角に運ばれます。そして、脊髄前角ある介在ニューロンがIb神経線維からの刺激をキャッチすると、脊髄前角細胞(運動神経細胞)の電位が下がって脱分極が抑えられます。
スタティック・ストレッチングは、筋肉の緊張が強かったり、また、その影響によって関節の動きが悪くなっている場合など、つまり「弛めたい」「柔らかくしたい」ときに役立ちます。
あるストレッチの研究では
・筋肉をゆっくり伸ばして抵抗を感じたところで20秒~30秒キープする
・5~6セット繰り返す
と効果的だと言われています。
まとめますと、身体を弛めたい柔らかくしたいという目的でストレッチをする場合、まずは、しっかり栄養をとること、温めること、そして、やさしく気持ちの良い刺激は交感神経活動を抑制しますので、「気持ちの良い、やさしい刺激」で筋肉をゆっくり伸ばして20~30秒キープし、それを5~6セット繰り返す。
逆に、ウォーミングアップなど筋肉を緊張させたい場合は、ラジオ体操や準備体操のような反動をつける動きを行うとよい。
ということになります。
お子さんの身体の状態に合わせ、ご活用ください。