脊柱の湾曲と中枢神経の発達にともなう筋肉運動の発達という視点から「ねこ背を治す」を考えると
骨盤のゆがみ・ズレでの悩みと同じくらい、「ねこ背」でお悩みの方から相談を受けます。
世間一般の整体・整骨院では、「通院しながら矯正すれば治る」とされていますが、「他院に通院して矯正を受けていたが治りません」という相談が意外に多いですし、ねこ背を治すためには矯正以外の方法が必要だと考えています。
今回は、脊柱の湾曲と中枢神経の発達にともなう筋肉運動の発達という視点から「ねこ背を治す」を考えみます。
さて、背骨(脊柱)というのは、胎児のときは全体的にゆるやかに後方に湾曲(後湾)していて、これは一次湾曲と呼ばれています。
成長していく段階で、頚部と腰部に前湾(前方に湾曲する)をみるようになります。
これを二次湾曲といいます。
頚部の前湾は「首が座る」と現れ、腰部の前湾は「二足直立するころ」に現れます。
胸部と仙骨部には一次湾曲が残り、S状の背骨ができあがります。
ようするに、背中が丸いのや骨盤の角度(仙骨部)は胎児期の名残であり、赤ちゃん(出生後)の運動発達が頚部と腰部の湾曲に深く関係しているということになります。
頭を首で支えることができ、頭を自分の意思で自由に動かすことができるようになることが「首が座る」、二足直立は、足裏に体重をのせて、足首、膝、股関節との連動で背骨を立てて動けるような状態になること。
このどちらにも当然のように筋肉が関わってきます。
筋肉は中枢神経の発達が未熟な時期は、一つの運動神経細胞が多くの筋細胞の収縮を制御しています。
そのため、筋肉運動としては粗大な、おおまかな運動しかできません。
ですが、中枢神経の発達に伴い神経回路の再編成がおこなわれるようになってくると、余分な回路が除去されて一つの運動神経細胞が制御する筋細胞の数が減っていくので、細かな、繊細な動きが可能になってきます。
神経回路の編成には、促進回路だけでなく、抑制系回路の形成が重要で、抑制系回路の形成には大脳皮質における「予測的制御」の機能獲得が重要だと言われています。
この予測的制御は、身体運動の“経験”に伴う感覚情報処理を経て、脳の中に身体の地図(マッピング)が形成されていくことでつくられていきます。
つまり、胎児期から赤ちゃんまでの身体運動を“どのように経験するのか”が予測的制御の形成に深く関与し、それが分離運動や巧緻的な運動の発達につながっているということです。
そして、筋繊維の発達は、筋肉に対する一種のストレス反応なので、同じ運動や運動負荷(ストレス)ばかりでは“慣れ”てしまい、筋肉はうまく発達していきません。
粗大な、おおまかな運動しかできない場合は、その運動に慣れてしまうので、筋肉はそれ以上発達せず、身体は成長していくが姿勢を保てないなどという状態が起こりえます。
神経回路の再編成がおこなわれ、分離した動き巧緻的な動きが出来るようになってくると、筋繊維にかかるストレスも多様化します。
例えば、首を持ち上げるなどの「生れて初めての運動」「当たり前のように首を動かせる運動」「繰り返し首を動かす運動」というように、その筋肉にかかる負担が変わるので、筋肉もしっかりしてくるということになります。
さて、この脊柱の湾曲と中枢神経の発達にともなう筋肉運動の視点から「ねこ背」をみてみると、
脊髄・脳幹・間脳・大脳辺縁系・大脳皮質と中枢神経が発達する
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胎児期の運動がきちんと行われることで、きちんとした「首座り」ができ、頚部がきちんと前湾する。
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その間も赤ちゃんの運動がきちんとできること、感覚刺激がしっかりはいることで中枢神経もスムーズに発達
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“きちんと”二足直立ができ、腰部がきちんと前湾する。
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胸部や仙骨部も“きちんと”後湾できている
と「ねこ背」にはならないことが分かります。
つまり「ねこ背」になるということは、中枢神経の発達や、胎児から赤ちゃんまでの運動発達のどこかに「ヌケ」や「遅れ」があることで起こっていると考えることができます。
ねこ背に対するアプローチは、矯正したり意識したりなど色々ありますが、脊柱の湾曲、中枢神経の発達に伴う筋肉運動の発達という視点から考えると、世間一般のアプローチでよくならない場合は、基本の発達に戻ってアプローチしていけばいいということが分かります。