腰痛・肩こり・関節痛など、施術で起こる身体の反応 ~ゲートコントロール~
アメブロに書いた過去記事を、ちょこちょこサイトのブログに引越し中です。
今回は「ゲートコントロール」について。
僕たち代替医療(民間療法)を提供する治療家は、患者さんが訴える腰痛・肩こり・関節痛などを良くするため鎮痛剤やブロック注射などといった薬物を使うことが出来ません。
なので、元々身体に備わっている治る、鎮痛の仕組みが上手く機能できるよう、治療家それぞれの才能を生かしなが身体の外から何らかの刺激を加えて施術を行っています。
薬物を使わず身体に刺激を加えて痛みを良くする方法としては
・広汎性侵害抑制調節(DNIC)を利用した抑制法
・局所への侵害刺激によって下行性疼痛抑制系を賦活させる抑制法
・ゲートコントロール理論
・温熱療法での局所の循環改善による発痛物質や痛覚増強物質の濃度を低下させる抑制法
・ストレッチによるIb抑制
が考えられます。
で、前にそれぞれをブログ記事にしたのですが「ゲートコントロール」について詳しく書いていなかったので、図もいれて詳しく書き直します。
~ゲートコントロール理論~
ゲートコントロールにより、中枢に痛み情報を伝達するT細胞(投射ニューロン)を、そのシナプス前(SG細胞)で抑制するという説。
ゲートコントロールが起こり痛みが抑制されるという説は否定されているんだけど、当時はこの理論を基にしてTENS(経皮的電気神経刺激)が積極的に活用されることになった歴史があるので治療家とは切っても切り離せない理論です。
図にするとこんな感じになります↓
それぞれを説明すると
☆投射神経細胞(T細胞)・・・このニューロンが興奮すると、中枢に痛みを伝えるというニューロン
☆抑制性ニューロン(S・G)・・・ 門番役のニューロン
図①・・・太い神経線維も細い神経線維も、末端からは興奮性(+)の伝達物質を遊離してT細胞を興奮させる
図②・・・シナプス前抑制 末端からの興奮性伝達物質は、門番役のニューロンにより抑制(-)される
図③・・・門番役のニューロンを働かせる
図④・・・門番役のニューロンは働かない
痛みを伝える神経が興奮した場合、門番は働かない④ので、シナプス前抑制②は起こらない・・・T細胞が興奮①するので、脳に痛みが伝わる。
触圧覚を伝える神経が興奮した場合、門番は働く③ので、シナプス前抑制②が起こる・・・痛みを伝える神経が興奮していても、痛みは抑制される。
捕捉として
非侵害刺激(身体が傷つかないやさしい刺激=軽い触・圧迫覚)を加えることで(神経線維でいえばAβ)、交感神経系の伝達物質であるアドレナリンとノルアドレナリンの濃度が下がって、交感神経系の活動が抑制され、血流を改善し、ブラジキニンなどの発痛物質の濃度が下がって痛みを軽減させることができることが解っています。
ここで更に、このゲートコントロール理論を補完するのが「ディスアファレンテーション仮説」。
以前、治療家向けのセミナーを行うとき、このディスアファレンテーション仮説を紹介させてほしい守屋カイロプラクティックオフィス 守屋 徹先生にお願いしたとこ快く了承して下さったのでブログでも紹介させて頂きます。
ディスアファレンテーション仮説
カイロプラクティックのマニピュレーションの病態生理学的影響を説明する仮説。
この理論では、マニピュレーションの治療対象として「関節複合体機能障害」が前提とされている。関節複合体機能障害は、長い間なにかと議論の的であったカイロプラクティックの「サブラクセーション/サブラクセーション複合体」に代わる概念として提示されている。
要するに「関節複合体に生じる病理的および機能的変化」を指す。
具体的には、
①可動性減少/不動化の悪影響
②機能的アンバランス(筋の拘縮・短縮など)
③筋筋膜トリガーポイント
の3つの基本的な要因の存在が指摘されている。
ディスアファレンテーション仮説に従って、痛みと鎮痛の機序を読み解くと、ゲートコントロール理論を補完するような興味深い仮説になる。
痛みは侵害受容器に対する侵害刺激にはじまる。
その要因として、組織損傷による機械的刺激と種々の化学伝達物質による炎症が起こる。
その痛み刺激は反射性に交感神経活動を亢進させるし、筋スパズムも引き起こす。また座位などの生活習慣姿勢などの身体の不動化も痛みの要因となる。
これらはすべて関節複合体における機能障害(不動化の悪影響、筋のアンバランス、トリガーポイント,脊柱筋の失調)に関与する。
そして同様に侵害受容器を興奮させることになる。
このとき求心性の入力はどうなるのだろう。
痛み刺激を伝達する神経線維は、比較的細い神経(Aδ神経線維とC線維)である。同時に、筋紡錘からのⅠa線維やAβ線維(触圧覚)の太い神経線維からの入力信号は減少する。
「侵害刺激の入力が増大」し、「圧・動きの機械刺激の入力は減少」する、という入力の不均衡な病態生理が同時性に伝導されるのである。
この同時性現象は、体幹軸の筋肉のトーンの低下やアンバランスをもたらすことになる。
そもそも「ディスアファレンテーション」とは何か。
「アファレンテーション:afferentation」は、「求心性神経インパルスの伝導」を意味する用語である。
その求心路が破壊されると、インパルスは遮断あるいは阻害される。この状態は接頭語「de」をつけて「ディアファレンテーション」と用語されている
ただし、求心性伝導路が破壊されていない「入力不均衡」の状態は、接頭語に「dys」が付けられて「ディスアファレンテーション」と用語されている。
それは関節複合体機能障害によって侵害刺激入力が増大し、同時に圧・動き刺激入力が減少することを意味している。求心性入力信号のアンバランスという神経病態生理学的な現象をさしている。
この現象は損傷などによる反射性の病態に限ったことではない。
例えば、加齢に伴い関節を構成する複合体では、筋肉、靭帯、椎間板などの軟部組織における柔軟性が失われてくる。関節も同様である。
柔軟性を欠いた組織は機能的変化を伴うために、通常行っている動きに対してさえ耐性も減少する。結果、損傷しやすくなる。それが侵害刺激となり、脳はそれを痛みとして認識する。
こうした求心性入力の不均衡によって、身体にはさまざまな表出が行われることになる。それは痛みの継続であったり、自律神経系のアンバランスからくる不調であったり、身体平衡系の不調や不均衡として表出されるのである。
そもそも反射系は運動系と自律系に出力されている。C線維からの侵害刺激は脳でさまざまに修飾される。だから求心性入力の不均衡が続く限り、身体の不調に陥るリスクも消えることはないのだろう。
同様に、圧・動き刺激の入力も脊髄から大脳に至る中継核に入る。その結果として随意運動が適正に行われ、身体の平衡系が保たれ、自律系の恒常性維持に作用することになる。
鎮痛系の機序という観点に立てば、求心性入力の不均衡を是正することで大きく鎮痛に貢献するのだろう。
入力信号の減少したⅠa線維やAβ神経を刺激すると、入力の不均衡がバランスされることになる。つまりC線維の興奮が抑制される。
・・・・・・・・・・
守屋先生、いつもありがとうございます。
守屋先生の書籍、「脳の中の痛み」でもこの仮説について書かれていると守屋先生から聞きましたので、皆さま是非。
ぼくも後で買います^_^;