自分の考え方の癖に気づき修正していくことが大事
こんにちは。
金田です。
かねた整骨院のブログにようこそ。
今回は、慢性腰痛に対する認知行動療法について書きます。
慢性腰痛に対する認知行動療法は、欧米や世界各国では定着し始めてるんですけど、日本では、慢性痛医療に対する理解の遅れや制度上の問題で、まだ実施できる環境が整っていないんですね。
私が「痛み」を勉強し始めたのが2006年だったはずですけど、そのときに購入した熊澤孝朗先生の著書「痛みを知る」に集学的アプローチの重要性や認知行動療法という考え方が書かれていました。
今、2023年ですが、なかなか浸透しないですね。
なので、「腰痛なのに心理療法??」って思われても不思議ではないんです
知ってる人より知らない人のほうが多いんですから。
世の中(地元にも)には、なかかな治らない腰の痛みを一回で治せる魔法使いのような整体師さんもいるようですが、私にはそのような力はありません。
なので、科学的に分かってきている痛みの仕組みや、科学では説明できないけど実効性のあるもの(独自の考え)をベースに、私が持っている知識と技術を、患者さんの状況に合わせて選択していくようにしています。
慢性腰痛をはじめ、慢性的な痛みでお悩みの方は世界中にいます。
そして、慢性疼痛の研究により、「治療の有効性」も分かってきています。
認知行動療法の有効性
日本には、慢性疼痛診療ガイドラインというものがあり、そのなかで、慢性腰痛などでお悩みの患者さんに、どんな治療を提案したらいいかを、エビデンスレベルと推奨度で教えてくれています。
エビデンスレベルはABCDの段階、推奨度は1,2の2段階あって、それを組み合わせて教えてくれてます。
エビデンスレベル
A(強):効果の推定値に強く確信がある
B(中):効果の推定値に中程度の確信がある
C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である
D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない
推奨度
1:する(しない)ことを強く推奨する
2:する(しない)ことを弱く推奨する(提案する)
認知行動療法は2B、「行うことを弱く推奨する」になってます。
研究の数や、バイアスリスクの観点から、エビデンスレベルはBの中程度なんですけど、短期的効果と長期的効果のどっちでも慢性疼痛全般で有効だと考えられています。
これは、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)やアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)でも同じですね
つまり、「心理療法は慢性痛の克服に有効ですよ」ってことです。
自動思考のパターン
慢性腰痛の治療に用いられる認知行動療法は、歪んだ非現実的な認知様式である自動思考パターンを修正していくことが主目的です。
私には、認知行動療法について分かりやすく説明することが出来ないので、私がいつも参考にさせてもらっているカウンセラーの向後義之さんの著書「わかるカウンセリング 自己心理学をベースとした統合的カウンセリング」から引用させていただきます(向後さんから許可をいただいています。ありがとうございます)
P213~
自動思考には6パターンがあるといわれています。
この非現実的な自動思考は、脳内の神経科学的な機能不全や思考の癖なので、修正可能です。
(1)悲観的予測
明確な根拠もないのに、否定的悲観的な予測をしてしまうこと。例えば、「ずっと、うつが続いているが、どうせ、この状態は治るわけがない」、「どうせ、私の提案なんか採用されるわけがない」など、「どうせ」で始まる思考パターンです。彼らは、「どうせ、・・・だから」と悲観的結果を出して、実行する前にすでにあきらめ、絶望してしまっているのです。それに対する現実思考は、「自分のうつは深刻だが、それが治るか治らないかは、実際にカウンセリングをうけてみなければわからない」、「採用されるかされないかは、企画書を提出してみなければわからない」などとなります。
(2)オール オア ナッシング思考
ちょっとした欠陥も許せない思考パターンです。例えば、「ひとう不可をとったので、僕の人生は、もうおしまいだ」などです。それに対する現実思考は、「ひとつぐらい不可をとったぐらいで、僕の人生には何ら影響はない。しかも資格の取得に必要のない単位ではないか!」などとなります。
(3)結論への飛躍
結論が出る前に、先回りして「悲観的な」結論を出してしまうことです。例えば、「約束の時間なのに彼はまだ来ない。もう私のことを嫌いになったんだ」などです。それに対する現実思考は、「だれでも、ちょっとぐらい遅れることはあるし、少し待ってみよう」などとなります。
(4)トンネルのような視野
自分の欠点や劣っている点ばかりに注意がいってしまって、自分の良いところに気づかないことです。例えば、すばらしい音楽の才能があるのに、「僕は数学が苦手だ」と悩んでいるなどです。それに対する現実思考は、「確かに僕は、数学が苦手だが、それがなんだ!僕には音楽があるじゃないか!」など。
(5)自責的思考
なにか悪いことがあると、自分のせいだと思い込んでしまうことです。例えば、学校でいじめられたとき、「私が地味で、ぱっとしないからだ」と思ってしまうなどです。それに対する現実思考は、「何が原因かは知らないが、こんな仕打ちをされるいわれな無い」などとなります。
(6)「~ねばならない」思考
オール オア ナッシングにも通じる思考パターンで、例えば、「自分は、成績優秀で、スポーツマンで、いつも明るくさわやかでなければならない」と思い込んだりすることです。それに対する現実的な思考は、「そんなことできるわけがないじゃないか。まわりにも、そんなやつはいない。むしろ、愛すべき欠陥があった方が人間らしい」などとなります。
以上、引用終わり。
本書では、これに続いて、「非現実的な自動思考を認識し、認知パターンを変えていく方法」が書かれています。
慢性腰痛の克服には、この認知行動療法(心理療法)が有効だとされていて、世界各国で推奨され定着しはめています。ですが、日本では慢性痛に対する理解の遅れと医療制度上の問題で、認知行動療法を提供するための環境整備が遅れているため、治療を受けられる医療機関が限られています。
なので、慢性腰痛の本格的な認知行動療法を実践するのは大変ですが、自分の思考の癖がどんなパターンなのかを知ることと、認知行動療法ではありませんが、「リフレーミング」ならできると思います。
リフレーミング
「リフレーミング」は、「コップに半分入っている水を、もう半分しかない…と思うか、まだ半分もある!と思うか」という喩えはよく使われますが、これがリフレーミングです。
例えば、「腰が痛くて起き上がるのに時間がかかった」を「時間がかかっても起き上がれた」、「体操をやってみたけどすぐに腰が痛くなった」を「腰は痛くなったけど体操ができた」という考えに捉えなおすなどです。
このように、自分の考え方の癖、認知パターンに気づき、修正していくことが大事になります。
今回は、慢性疼痛に対する認知行動療法について書きましたが、この他に
- 痛みのことを学ぶ
- 運動療法(エクササイズ)
- 生活習慣の見直し
も、慢性腰痛を良くしていくためには大切なことになります。
治療法(施術法)や治療者(施術者)に依存せず、患者さん自らも積極的に治療(施術)に参加することが大事ということです。
施術者は、患者さんを依存させず、患者さんの回復を邪魔せず、サポートしていくことが大事だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。