運動誘発(関連)性筋痙攣
こんにちは。
金田です。
今回は、これも相談が多い、「運動中に足がつる」運動誘発性筋痙攣について書きます。
運動誘発性筋痙攣
運動誘発性筋痙攣【Exercise-associated muscle cramp (EAMC)】は、「運動中(または運動後)に足がつる」というスポーツ障害のことです。
原因は何か?
EAMCの原因について、神経学的疾患であるのか、水分および塩分の不均衡であるのかを調べた過去の研究では、「筋疲労に焦点を当てた神経筋病因」が支持されていました。
神経筋コントロール不均衡説と言われていますが、これは、筋の過負荷と疲労などによって、α運動ニューロンの興奮性とゴルジ腱器官からのIb抑制性のバランスが悪くなることが原因とされる説です。
※α運動ニューロン
骨格筋の深部には、「筋紡錘」と呼ばれる特殊な骨格筋線維が存在し、この筋紡錘の外側の筋線維が、一般的に「筋肉(錘外筋)」と呼ばれています。この錘外筋をコントロールしているのがα運動ニューロンです。
※Ib抑制
筋腱が伸ばされると、筋腱移行部にあるゴルジ腱器官が働き、Ib神経線維でその情報が脊髄に伝えられます。つまり、Ib神経線維は、筋の張力により興奮の程度が変化するということになります。例えば、安静時には筋肉の活動を抑制(Ib抑制)し、歩行時には筋肉の活動を増やすということになります。
ですが、近年の研究では、水分・塩分の不均衡や神経筋病因という単一の原因ではなく、「固有の内在的および外在的要因の合流によるもの」であると言われています。
結局、今はまだ、EAMCについての詳しいメカニズムが分かっておらず、
- 筋肉の疲労や過負荷
- 電解質の異常
- 水分バランス
- 脱水
- 気温
- 服用している薬
- 睡眠不足
- 飲酒
など色々な要因が関係していることが考えられますし、神経疾患や代謝性疾患が隠れている可能性も考えられます。
つまり、「いろんなことが考えられるので、まずは個人に起因するリスクをしっかり把握しましょう」ということになっています。
治療と予防
急性EAMC、つまり運動中に急に攣った場合は
- 症状が軽減されるまでは穏やかな静的ストレッチング
- 安静
- マッサージ
などの対症療法が推奨されています。
もちろん、脱水を伴う場合は補液も重要です。
繰り返すEAMCには、確立した予防法や治療法は存在しません。
予防を目的として奨められることがある、カルシウムサプリメント、マグネシウム、キニーネ、ベンゾジアゼピン系薬剤は、効力が実証されていないので推奨されていません。
EAMC予防で大事なのは、「もっと水分をとりましょう」「足が攣ったらマグネシウム」ではなく、徹底的な病歴聴取を行い固有の危険因子を特定すること、食事や生活習慣を見直すことでしょう。
そこが分かってくれば、自分にあった予防法や治療法が見えてくると思います。