痛いと得をする【疾病利得】

痛いと得をする

腰や肩などに痛みが出ると、痛みがあることで得をする人がいます。

「疾病利得(しっぺいりとく)」という言葉がありますが、腰や肩などに痛みがあることで、誰かに心配してもらえる、仕事を休める、お金が発生するなど、本人にとって利益(得)になることがあります。

疾病利得は、いわゆるオペラント条件づけの原理で増加する「痛み行動」によって獲得されると言われています。

オペラント条件付けとオペラント行動

行動分析学という分野では、行動はレスポンデント行動とオペラント行動に大別されます。

レスポンデント行動は、例えば「レモンを見ると唾液が出る」のように、特定の刺激に誘発される行動のことで、反射はレスポンデント行動の代表です。

行動は、特定の刺激に対して反射的に起こります。

オペラント行動は、特定の誘発刺激を持たない行動で、自発的な学習性の行動になります。

オペラント行動は、行動して自分にとってプラスの結果が得られれば行動は増幅し繰り返され、マイナスの結果であれば行動は減少します。

例えば「腰が痛いと訴える(痛み行動)と心配してもらえる(報酬)」とします。この心配してもらえるという報酬が自分にとってプラスの結果だった場合、痛み行動は増幅し繰り返されることになります。

行動は、行動の結果によって起こる頻度が変わります。

痛み行動とは

痛み行動とは、以下のようなもの(例)になります。

  • 痛みを訴える
  • 痛いと叫ぶ
  • 痛い部分をさする
  • 痛みをほのめかす
  • 辛い表情をする
  • 足を引きずる
  • 仕事を休む
  • 学校を休む
  • 腰をかばい横になる
  • 腰に手を当てて立つ
  • 杖を使う
  • 車いすを使う
  • サポーターをつける
  • 仕事を早退する
  • 家事を避ける
  • 病院へ行く
  • 薬を飲む
  • 薬を求める
  • ドクターショッピングをする
  • 労災保険を請求する
  • 訴訟を起こす

など。

痛み行動と疾病利得の関係

身体に痛みの原因となる刺激が加わると、痛み行動がでるのは正常な反応です。

ですが、上記のような痛み行動に報酬(得をする)がでると、痛み行動が強まります。

痛いと訴える、辛そうな顔をするなどをすると、誰かに心配してもらえたり、お金をもらえたり、自分が嫌な仕事を避けることができたり、早く帰りたいときに仕事を早退できたりなどという報酬が得られる。そうすると、またそのような報酬を得たいがために痛み行動が強化されて、痛み行動を繰り返し抜け出せなくなるサイクルができあがります。

このような仕組みは、オペラント条件付けによるものです。

「痛み行動」は、病院での検査結果や組織損傷度合いから想定されるよりも、過剰に引き起こされることが多くなると言われています。

詐病ではない

疾病利得は無意識レベルで生じるため、意図的な詐病とは区別されています。

人は、「痛み行動」をどんどん強化すべく自らをトレーニングしてしまう場合がありますが、「痛いふりをしている(詐病)」というわけではありません。

疾病利得なのか詐病なのかを他人が区別するのは難しいですが、痛みを何とかしたいなら、本人が気づき、そのサイクルから抜け出すために行動を起こすことが必要になるのではないでしょうか。

私たち民間療法を提供する側は、慢性疼痛を理解しながらサポートすることが大事だと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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