腰部脊柱管狭窄症
こんにちは。
金田です。
今回は「腰部脊柱管狭窄症」について書きます。
脊柱管狭窄症とは
椎骨が連なって脊椎(背骨)できています。
脊椎の中心を通る脊柱管という空間の中は脊髄にあり、脊髄からは椎骨と椎骨の間を通り、31対の脊髄神経がでています。
それぞれの脊髄神経は、根元で2本の枝(神経根:運動神経根・感覚神経根)に分かれています。
※運動神経根(運動神経)は、脳と脊髄からの運動指令を骨格筋を中心に体の各部位に伝えます。
※感覚神経根(感覚神経)は、身体の各部位からの感覚情報を脳に伝えます。
この、脊髄が入っている脊柱管(腰の)が狭くなっているのが、腰部脊柱管狭窄症です。
脊柱管が狭くなる原因
脊柱管が狭くなる一般的な原因としては
- 背骨の変形(変形性関節症)
- 椎間板が飛び出す(椎間板ヘルニア)
- 黄色靭帯が厚くなる
- 腰椎すべり症
- 腰椎分離症
があります。
症状
どの神経が影響を受けているかで異なりますが、腰部脊柱管狭窄症で特徴的な症状は「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」です。
背筋を伸ばしてたったり歩くと、下肢に痛みやしびれが出て、前かがみになり休んでいると症状が治ったり軽減されたりします。
腰の痛みは酷くなく、安静時もほとんど症状がないことが多いです。
神経根が圧迫(絞扼)されると、馬尾症候群が生じることがあります。
腰の神経には、
- 腰神経
- 仙骨神経
- 尾骨神経
がありますが、この神経の神経根の束は、馬の尻尾のようになっているので馬尾と呼ばれています。
馬尾症候群になると、
- 排尿排便障害(尿失禁など)
- 膝から下が麻痺
- 鼠径部や会陰部の感覚がなくなる
などの症状ができることがあります。
馬尾症候群が疑われる症状がでたら、深刻な状態なので直ちに医療機関を受診してください。
それは本当に神経痛なのか?
座骨神経痛でも説明しましたが、「馬尾症候群を除いて、その症状は本当に神経症状なのか?」という問題があります。
神経痛の正式名称は「神経障害性疼痛」です。
国際疼痛学会は、2008年に「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛」と定義しました。
体性神経系を説明しますと、私たちの神経は、脳と脊髄の中枢神経と末梢神経に分かれています。
末梢神経は、自律神経系と体性神経系に分かれていて体性神経系は、運動神経系と感覚神経系からなっています。
運動神経は、筋肉を動かす神経です。
感覚神経は、痛みはもちろん、温かい冷たいといった温度覚、触れている触覚や、深部感覚という、手や足などを含めた自分の身体の位置がどこにあるのかという感覚です。
神経痛というのは、この感覚神経系の痛みになります。
そして、末梢神経には神経支配領域というものが存在します。
神経痛の診断基準としては
1,まずは一番初めに病歴の確認をします。
例えば、
・過去に事故か何かで神経がダメージを受けたことがあるか
・神経が担当している範囲に痛みがあるか
ここを確認し該当した場合、神経痛である確率は30%~50%だと言われています。
2,該当した場合は神経学的診断をします
神経が担当している範囲に「感覚の異常(障害)」があるか
をみて、該当すると確率は70%~80%に上がると言われています。
3,ここに該当したら最後に確認の検査をします
確認の検査には、MRI、CTといった画像検査と、神経電動検査や筋電図検査などを行います。
ここで確認が取れたら90%~の確率で神経痛だと判断されます。
痛みに詳しい医師は、上記のような順番で診断していきますが、ほとんどの病院では、まず先に画像検査のみをして、解剖学的神経支配領域の細かい感覚検査は行わず(大雑把に行うことはある)、患者さんが訴える一般的な症状と照らし合わせて腰部脊柱管狭窄症と診断しています。
その、腰部脊柱管狭窄症が原因と言われた症状は、本当に神経症状なのでしょうか?
治療法1
一般的な治療法としては
- 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)
- 神経の痛みを軽減する薬
- 神経ブロック注射
があります。
薬や注射の効果がない場合は、椎弓という部分を取り除く手術もあります。
その他、Raczカテーテルや運動器カテーテル治療という方法も出てきていますね。
治療法2
治療法1では、一般的な病院で行われる治療法を書きましたが、痛みに詳しい医師がいる医療機関では、神経痛ではなく馬尾症候群でもない場合は、筋肉に着目した治療を行う場合があります。
腰部脊柱管狭窄症という診断ではなく、筋痛症(筋筋膜性疼痛症候群)と判断し、トリガーポイントに直接アプローチするトリガーポイント療法を中心に、柔軟性を高めるストレッチや低下した筋力を増強するための筋トレなど運動(エクササイズ)を取り入れた治療を行い治癒した例もたくさん出ています。
まとめ
腰部脊柱管狭窄症と診断された場合でも、画像に狭窄は映っていても、その症状は神経症状ではなく、筋肉から出ている場合も大いに考えれます。
既存の治療で効果がない場合は、画像診断だけではなく、解剖学的神経支配領域に痛みはもちろん感覚異常があるかないか、神経電動検査などでも異常が認められるかなど、詳しい検査をしてくれる医療機関を受診し、神経症状ではない場合、筋肉に着目した治療を行ってみてもいいのではないでしょうか。