チョコレート鎮痛
世の中そんな時期なので、今回のブログは、2009年にThe Journal of Neuroscienceに発表された、シカゴ大学神経生物学専攻のPeggy Mason教授とHayley Foo准教授による研究をのせておきます。
要約すると
●ラットにチョコレートの小片を与えたり、水や砂糖水を口に直接注入すると熱痛覚閾値が上昇。
●空腹や食欲とは関係はない。
●水を飲んでいる時でもチョコ同様に熱刺激に対する逃避反応が延長するので鎮痛効果はカロリーとは無関係。
●キニーネ(苦味物質)による吐き気やLPSによる悪心により、チョコレートによる鎮痛効果が消失。
●ラットの脳幹の大縫線核(だいほうせんかくmedullary raphe magnus:NRM)をムシモールで阻害すると鎮痛効果が消失したのでNRMが関与する。
です。
チョコレートではなく水でも鎮痛効果があるのなら、水を飲んだほうが身体にやさしい感じがしますが、蔗糖(ショ糖)誘発鎮痛法というものもあります。
これは、母子分離ストレスによって生じる超音波が、ショ糖溶液の摂取によって減少することを示す実験をおこなった結果、生後10日のラットにショ糖溶液を摂収させた群は、精製水を与えた群より母子分離の超音波発声が有意に抑制され、同時に痛み反応も有意に抑制された。この結果がオピオイドを介したものかを検討するためにナルトレキソンを前投与したところ、発声の抑制と鎮痛のいずれもが消失した。
という研究により分かったものです。
●米国などの新生児病棟などでは蔗糖誘発鎮痛法Sucrose-induced analgesiaは応用されつつある。
●新生児の口腔内にショ糖水を与えることによって啼泣時間の短縮や心拍数上昇の抑制,顔面の苦痛表情の緩和が確認されている。
●ラットでの実験では、蔗糖水をラットの口腔内に与えることでβエンドルフィンが視床下部から脳脊髄液中に大量に分泌されることが確認されている。
●蔗糖による鎮痛効果は内因性鎮痛物質の分泌促進と下行性疼痛抑制系の働きを賦活することによって生じる。
と言われています。
この蔗糖誘発鎮痛法の適応は新生児でのみ有効とされているようですが、今でも身体のどこかに母子分離不安(ストレス)を抱えている子どもや大人は、水ではなく、甘いチョコレートや甘いお菓子のほうが鎮痛効果があるのかもしれませんね。