腰の疲労骨折(腰椎分離症)
こんにちは。
金田です。
今回は、過去に「腰の疲労骨折(腰椎分離症」について書いた【UG版(アップグレード)】を整理し、ちょっとだけ情報を追加したものになっています。
腰の疲労骨折(腰椎分離症)とは
腰の疲労骨折(腰椎分離症)は、病院に行ってレントゲンを撮ったとき、腰椎斜位像で椎弓といわれる、腰椎の後ろの部分の神経を取り巻く薄い板状の骨の部分が骨折しているのがレントゲン写真に写っていたからついた病名です。(※画像は松田整形外科記念病院様サイトからお借りしました)
ですが、レントゲンを撮っても分からないヒビ(疲労骨折)が、MRI検査では白く映る(初期)ことがあり、そこからヒビが広がったり(進行期)、完全に分離(終末期)しないうちに発見できるようになったことから、今は「腰の疲労骨折」という名前が使われています。
スポーツをやっていて急に腰が痛くなったり、腰を反らせたりひねったりしたとき左右差のある痛みが1か月以上続く場合は、腰の疲労骨折を一番に疑って、早いうちに病院でMRI検査を受けることをお勧めします。
原因
スポーツを活発に行っている10代前半(小学校高学年~)に起こりやすいと言われています。
スポーツで腰を反らしたりひねったり(回旋運動)を繰り返すにより起こる(発生率5%)といわれており、レントゲン写真よりもCTで確定診断を行います。
腰の疲労骨折の発生には、体の柔軟性も影響する(特に、ハムストリングスの硬い人が多い)と言われています。
症状
症状としては
- 運動していると腰が痛いけど、普段の生活では痛みがない
- 腰を反らすと痛くなる
- 痛みが酷いときには前かがみも制限される
のが特徴です
終末期になり、コルセットでいくら固定しても絶対に骨がくっつかない偽関節になってしまった場合、分離部・偽関節部を包む関節包と隣り合わせの椎間関節(facet joint)の滑膜炎が起こってしまう場合があります。
治療
治療は、初期では原因となった動き(腰を反らせたりひねったり)を制限するコルセットを3~6ヶ月装着します。
骨がくっつく確率は
- 小学校高学年で早期に発見できれば骨がくっつく確率は90%
と言われていますが、中高校生になるとその確率は徐々に低下していき
- 進行期(ヒビが広がっている)には60%
- 終末期(完全に分離)ではほぼ0%
と言われています。
コルセットでの保存療法で痛みが改善されなかった場合は、骨を固定する手術という選択肢もあります。最近では「運動器カテーテル治療」という治療法で痛みが改善された例も出てきています。
早期回復に向けてのポイント1【重要】
治療のためにコルセットをしていても、運動は全く禁止するわけではありません。
腰の痛みが落ち着いてきたら、早めに
- 体幹や固定されていない胸椎・胸郭のストレッチ
- 大腿四頭筋、ハムストリングスのストレッチ
- 腸骨筋、お尻の筋肉、股関節周りのストレッチ
- ドローインなどの腹筋運動
- プランクなどの体感トレーニング
を行い、コンディションを整えましょう。
初期の疲労骨折や、終末期の滑膜炎からの痛みではない場合は、腰~下半身の硬くなった筋肉からの痛みの可能性が高いです。
その場合は、ストレッチや筋トレと併用してマッサージなどを行うと、コンディションが整いやすと思います。
早期回復に向けてのポイント2【重要】
骨がくっついてもくっつかなくても、しっかりコンディショニングを行えば、腰の痛みは治り、腰に痛みのない状態で今まで通りスポーツを行うことができます。
慢性疼痛(慢性腰痛)に移行してしまった場合でも、痛みのコントロールを行いながら、これまで通りスポーツを楽しむことができます。
痛みの回復には認知や情動、つまり、物事の考え方や捉え方、不安や恐れなどが深く関与しています。
ネガティブな情報だけを集め、その情報だけを必要以上に信じ、偏った情報を鵜呑みにして、お子さんの不安や恐怖を煽らないよう、ご家族の方も必要以上に不安にならないよう気を付けてください。
これからエビデンスを紹介しますが、少しでも不安の解消につながれば幸いです。
腰椎分離症(腰の疲労骨折)とすべり症のエビデンス
◆脊椎分離症または脊椎分離辷り症のあるアスリートを約5年間追跡調査した結果、連日の過酷なトレーニングにもかかわらず症状を訴えた者は皆無だった。若者にアスリートの道を諦めさせたり激しい運動をさけさせたりする必要はない。http://1.usa.gov/NJNbpB
◆脊椎分離症または脊椎分離辷り症のあるアスリート86人( 6~20歳 男性62人女性24人)約5年間追跡調査した結果、連日の過酷なトレーニングにもかかわらず症状を訴えた者は皆無だった。若者にアスリートの道を諦めさせたり激しい運動をさけさせたりする必要はない。http://1.usa.gov/NJNbpB
これはハンドボール、バスケットボール、バレーボール、体操選手、陸上選手を対象とした研究ですが、脊椎分離症または脊椎分離辷り症のある一流バレエダンサーも腰痛発症率に差はないことが明らかになっています。分離症や辷り症を恐れる必要はありません。
◆若いアスリートの腰痛は脊椎分離症が原因と思われがちだが、4243名を対象としたイタリアの研究では13.5%、 3152名を対象としたスペインの研究では8.02%でしかない。http://goo.gl/duFR7W http://goo.gl/LyE5jU
これは一般的な腰痛患者における脊椎分離症の頻度と変わりませんし、このような画像検査で確認できる異常が患者の症状と相関するわけでもありません。したがって、トップアスリートの腰痛だけは特別だというわけではないのです。
◆現在のX線所見の報告書(椎間板変性・分離症・分離辷り症・二分脊椎・腰仙移行椎・ショイエルマン病)は患者を不安にさせ、不必要な活動制限や思い込み、不必要な治療へと追い込む恐れがあるため、挿入文を追記することを推奨する。http://1.usa.gov/X086so
これは病名で患者さんを不安にさせないよう厳重に注意するようにということです。