怪我の治り方【捻挫・打撲・肉離れ・骨折・脱臼】
スポーツをしていると、捻挫や肉離れなどの怪我をすることがあります。
怪我をしたら、早く治し競技に戻りたいので、病院や整骨院に通院される方が多いと思います。
なかには、「整骨院に毎日通えば、まるで魔法をかけてもらったかのように怪我が治る」と信じている方がいらっしゃいますが、早く治ったのは損傷の程度が軽かっただけで、整骨院に毎日通ったからでも、魔法のような電気治療のおかげでもありません。
捻挫や肉離れなどの怪我は、損傷した組織の回復過程に沿って回復しますので、損傷の程度により違いはありますが、治るまでは時間が必要になります。
整骨院での電気治療や徒手療法などは、怪我からなるべく滞りなく回復できるようにサポートするのが目的です。
怪我をした際、自分の患部の状態を確認することができれば、「早く治すために今何をすべきか」が分かると思います。
今回は、基本的な怪我の治り方をお伝えしていきます。
目次
- 結合組織の回復の仕方(捻挫・脱臼・肉離れ)
- 骨組織の回復の仕方(骨折)
- 筋組織の回復の仕方(打撲・肉離れ・筋肉痛)
- まとめ
- 骨膜や筋膜などの説明
結合組織の回復の仕方
腱、靭帯、骨膜、筋膜は結合組織と呼ばれています。
図は、その結合組織の回復の仕方を表しています。
例えば、令和7年1月26日(日)に足首を捻挫したとします。
※捻挫は靭帯損傷です(程度により損傷度合いが変わるだけです)
- ケガをした日(0日目)から炎症が起こります
- 炎症は1月29日(水)が炎症のピークで、そこと重なるように新しい組織ができてきて、回復してきている組織に栄養を届けるために血管新生が起こり始めます(増殖期)
- 炎症は徐々に落ち着いてきて、捻挫して傷めた靭帯も回復していきます(成熟期)
傷めた程度や血管新生の状態などにより、怪我が早く治るかどうかが決まります。
それぞれを専門的に説明すると以下のようになります。
炎症期
増殖期の主要な組織学的変化である肉芽組織形成と血管新生に不可欠なサイトカインが放出される大事な時期(サイトカイン は、細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称)
増殖期
・肉芽組織(タイプⅢコラーゲン:伸長性、柔軟性が要求される組織で含有率が高い)が形成されたり、回復してきている組織に栄養素を供給するために血管新生と呼ばれる反応が起こる時期。
・血管新生の乏しい肉芽組織は治りが遅く障害され、難治性になると言われています。
成熟期
・創収縮・・・傷が小さくなっていく
・コラーゲンのリモデリング・・・瘢痕組織へ変化するためにタイプⅢコラーゲンがタイプⅠコラーゲン(硬度が要求される組織で含有率が高い)へと変化する
骨組織の回復の仕方
骨折など、骨を傷めた場合の回復の仕方は、
骨折(骨・骨膜・血管の損傷)により血種形成
↓
炎症
↓
肉芽組織形成・毛細血管形成
↓
化骨形成
↓
破骨細胞により不要なものは吸収され骨芽細胞により新たな骨が形成
という感じになります。
骨折した部位や年齢により治癒日数は異なります(子どもは早く治る)。
肋骨で約3週間、鎖骨で約4週間、上腕骨で約6週間、大腿骨で約8週間、大腿骨頸部で約12週間と言われています。
骨折でも、はじめに炎症が起こりますので、安静にしててもズキズキ痛みます。
炎症が落ち着いてくれば、骨がくっついていなくても強い痛みは落ち着いてきます。
ですが、きちんと骨がくっつくまで固定が必要なので、痛みが落ち着いても無理は禁物です。
筋組織の回復の仕方
肉離れや遅発性筋痛の場合は
筋組織損傷
↓
筋繊維の壊死 ※1
↓
筋繊維の壊死が発生した1~2日後には図bのような状態となり、炎症もピーク ※2
↓
筋繊維の再生が始まる 図c
↓
壊死から3日後には筋管細胞の形成が始まる 図d
↓
壊死から7日後、筋管細胞が壊死した筋繊維の両端をつなぎ合わせるように融合し筋繊維を再生する
↓
壊死から1か月後にはほぼ回復し元通りになる(再生完了)※3
※1
筋繊維は多核細胞なので生存力が強く、壊死は一部にとどまり再生・回復する
※2
・筋繊維の部分的な壊死だった場合には大きな出血はなく痛みもないが、炎症のピークが遅れて発生することが、遅発性筋痛の一因といわれている
・「肉離れ」など筋損傷の程度が大きい場合は、筋繊維の壊死だけではなく筋膜を含んだ筋組織の断裂に及ぶため、出血も顕著にみられ、炎症反応も起こる
※3
筋管細胞がそのまま成長して新たな筋繊維となり、筋繊維の数が増加することもある
となります。
肉離れも、損傷の程度により早く治るのかどうかが決まります。
まとめ
まとめますと、筋肉、靭帯、腱、筋膜、骨膜、骨、どれを傷めても程度によりますが、
- まずは炎症が起こる
- その後に壊れた組織の回復が始まる
- 組織回復のためには酸素や栄養素を運ぶために、そして痛み基になる発痛物質を洗い流すためにも血液の流れをよくする必要がある
- 完全回復までの期間は、どの組織を損傷したのか、ケガの程度、ケガをしながら無理しなかったか、リハビリ、栄養などで決まる
となります。
骨膜や筋膜などの説明
筋膜
- 骨格金全体を覆う筋上膜、筋束を覆う筋周膜、筋繊維を覆う筋内膜がある
- 結合組織
- コラーゲン繊維が網目状で伸張性に富んでいる (※腱・靭帯はコラーゲン繊維に伸張性がないので組織の伸張性はわずかかない)
骨膜
骨の表面を覆う結合組織の膜
腱
骨格筋の両端にあって,筋肉を骨に付着させる仲介をしている強力な結合組織
靭帯
骨同士を連結し、関節の安定性を高め、運動方向を制御する結合組織
コラーゲン
靭帯、腱、骨などを構成するタンパク質
硝子軟骨
関節軟骨、骨端板、肋軟骨、気管軟骨、喉頭軟骨などを構成する軟骨。硝子軟骨の基質はゲル状であり、その約70%は電解質を含む水分で構成されている
血管、リンパ管、神経を有さないのが特徴で、厳密な意味での炎症は起こらない。
弾性軟骨・・・耳の軟骨など
繊維軟骨・・・椎間板、関節包、腱や靭帯が骨に結合する部分など
骨化核(点)
軟骨でできた骨の原型となる部分
骨端核
成長軟骨(骨端軟骨)の中心にできる骨となる核