顎関節症
こんにちは。
かねた整骨院の金田です。
今回は、意外と相談が多い「顎関節症」について、一般社団法人日本顎関節学会ホームページにあるガイドラインや顎関節症治療の指針2020などを参考に、顎関節症とは何か~顎関節症は整体・整骨院で治るのか?を書きます。
顎関節症とは
顎関節症の概念は、顎関節や咀嚼筋の疼痛、顎関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である。その病態は、咀嚼筋痛障害、顎関節痛障害、顎関節円板障害および変形性顎関節症である。
とされています。
分かりやすい言葉に変換すると、
- 顎の関節や顎を動かしたり食べ物を歯で咬む筋肉の痛み
- 口の開け閉めで顎の関節に雑音がする
- 大きく口を開けられないし動かすのが困難
という症状がメインとなる、顎関節のトラブルをとりまとめた病名で、
その中には、
- 顎を動かしたり食べ物を咬む筋肉の痛みが主症状(咀嚼筋痛障害)
- 顎関節の痛みが主症状(顎関節痛障害)
- 顎関節の中の関節円板のずれが生じるもの(顎関節円板障害)※ 関節円板とは、顎関節の骨と骨の間にあるクッションの役割をしている組織
- 顎関節を構成する骨に変形が生じるもの(変形性顎関節症)
が含まれている。
ということになります。
顎関節症の症状
顎関節症の代表的な症状は、
- 顎の関節や顎を動かしたり食べ物を歯で咬む筋肉の痛み(顎が痛い)
- 口の開け閉めで顎の関節に雑音がする(顎関節雑音)
- 大きく口を開けられないし動かすのが困難(開口障害)
だと言われています。
顎関節症の原因
顎関節症になってしまうメカニズムは不明なことが多く、日常生活を含めた環境因子・行動因子・宿主因子・時間的因子など、顎関節症をひき起こすもとになる多くの要素が積み重なり、個体の耐性を超えた場合に発症するといわれています。
日常生活でのリスク因子(発症・増悪・持続因子)は多く報告されているらしく、
1,日常生活を含めた環境因子
・緊張する仕事
・多忙な生活
・対人関係の緊張
など
2,行動因子
・硬い物の咀嚼
・長時間の咀嚼
・楽器演奏
・長時間のデスクワーク
・単純作業
・重量物運搬
・編み物
・絵画
・料理
・ある種のスポーツ
など
※習癖として
・覚醒時ブラキシズム(歯ぎしり)
・日中の姿勢
・睡眠時の姿勢
・睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)
など
3,宿主因子
・咬合
・顎関節形態
・咀嚼筋構成組織
・疼痛閾値
・疼痛経験
・パーソナリティ
・睡眠障害
など
4,時間的因子
悪化・持続因子への曝露時間
※ある環境下にさらされている時間の累積値
と言われています。
要するに、『日常生活、生活習慣、仕事、人間関係、ストレス、食事、運動、考え方の癖、など様々なことが原因となりうる』ということです。
顎関節症の診断
顎関節症は、顎関節痛・咀嚼筋痛)・開口障害・顎関節雑音のうちの1つ以上があり、これらと同じような症状の出ることのある他の病気が除外されたときに顎関節症と診断されるとのことです。
他の病気というのは、頭蓋内疾患・歯、耳、鼻など隣接器官の病気・心臓、血管、神経系の病気、線維筋痛症や膠原病などのことになります。
腰痛や肩こりと同じように鑑別診断が必要なので、柔道整復師や整体師が軽々しく判断するべきではないですね。
なぜ痛いのか?
顎関節症の痛みは、顎関節と咀嚼筋の痛みに分けられ、そのどちらか、あるいは、両方に痛みがある方がいるとのことです。
そして、顎関節の痛みは、顎関節周囲に炎症がある場合や、咀嚼筋の痛みは、筋・筋膜痛(局所と中枢の問題が関係している)が生じている場合などがあるらしいです。
つまり、腰痛や肩こりと同じく
・侵害受容性疼痛
・神経障害性疼痛
・痛覚変調性疼痛
に分けて考えると分かりやすいということですね。
口を開けると音がする原因
顎関節内部の関節円板がずれているときや、顎関節を構成している骨の形が変化しているとき、口の開け閉めでこすれあったような音や「カクンカクン」という音がすることがあるとのことです。
口が開かなくなる原因
炎症や腫瘍その他疾患が除外出来れば、顎関節内部の関節円板がずれることで関節の動きが妨げられている場合や、咀嚼筋の痛みのためにあごが動かせない場合があるとのことです。
また、痛みのために口を大きく開けないでいることで、顎関節や咀嚼筋の運動が制限されてしまうことがあるとも言われています。
腰痛や肩こり同様、痛みの悪循環ですね。
顎関節症の治療方法
顎関節症の多くは時間経過とともに改善、治癒していくことが示されており、米国歯科研究学会(AADR)による顎関節症治療指針では、「初期治療は病態説明と疾患教育に始まり、可逆性である保存的治療が主体として行われるべき」と示されています。
可逆的な治療というのは、施した治療による効果がなかった場合でも、患者さんにその治療による被害を残さず元の状態でいられる治療のことです。
歯を削る・歯列矯正をするといった治療は不可逆的な治療となります、
ようするに、「歯を削ったり矯正器具をつけたりしないで症状を改善させることができる治療法をやりましょ」ってことですね。
具体的には
- スプリント(マウスピース)
- 生活指導
- 薬
- 開口訓練
- マッサージや湿布
- 習慣や癖を修正する行動療法
などです。
「これって顎関節症かも?」とおもったらどうするか
「この顎の痛みは顎関節症かもなぁ」と思ったら、まずは歯医者さんに相談に行きましょう。
顎関節症は整体や整骨院で治るのか?
他の整骨院や整体の先生方がどう考えているか分かりませんし、ネットでみかける「顎関節症は根本治療で改善!」みたいにうたってる人の考え方もかわりませんので、かねた整骨院の考え方を書きます。
顎関節症も、腰痛や肩こりなどの筋骨格系疾患同様、まずは除外診断が必要です。
その後は、侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・痛覚変調性疼痛など痛みの仕組みに当てはめて考えていくと分かりやすいです。
歯医者さんで「顎関節症ですね」と診断された場合、治療の選択肢は「可逆性である保存療法」になります。
侵害受容性疼痛で炎症がない場合は、侵害受容器を刺激しているのは血流が悪いことによる組織の酸欠などで作り出される発痛物質になります。
その場合は、筋筋膜性疼痛(筋痛症)の可能性もあるので、咀嚼筋や顎関節への徒手療法や運動療法などを整骨院や整体で行うのはありだと思います。
神経障害性疼痛の場合は、もはや顎関節症ではなくなるので、整骨院や整体では少しでも日常生活が楽に送れるようサポートするのがメインとなります。
痛覚変調性疼痛の場合は、難治性の顎関節症になりますので、クライアントの生活の質(QOL)と日常生活動作(ADL)の向上をサポートするのが整骨院や整体での施術となります。
以上をふまえて「顎関節症は整骨院や整体でなおるのか?」ですが、私個人の見解としては腰痛や肩こり同様、
- 治るときもあれば治らないときもある
- 魔法のような施術法は存在しない
- 根本治療など存在しない
- 生活習慣の見直しとセルフケア(運動療法と認知行動療法)が大事
- 整骨院や整体を活用するのはあり
という感じです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。